祖国とは国語 (新潮文庫)
藤原 正彦
数学者藤原正彦さんのエッセイ集。
ピックアップ
・国家の体質は国民一人一人の体質の集積。一人一人の体質は教育により形作られる
・母国語の語彙は思考であり情緒
・母国語はすべての知的活動の基礎。これが確立されていないと思考の基盤が得られず、内容の空疎な人間にしかなれない
・数学はすべての科学の言葉
・美感や調和感なくしては、いくら論理的思考力が抜群であっても、どちらの方向に論理を進めてよいのかわからない。
・その人の教養とか、それに裏打ちされた情緒の濃淡や型により、大局観や出発点がきまり、そこから結論まで論理で一気に進む
・この世のどんな現象にも数字がつまっていて、しかもなぜか美しい
・「若き数学者のアメリカ」
・「遥かなるケンブリッジ」
…
英語第二公用語より国語学習・読み書きをしっかりすべき、っていう主張にはかなり説得力があった。
たしかに母国語での思考もおぼつかないのに外国語だけ勉強しても意味がない。
それから、英語第二公用語論を、「母国語=文化伝統=民族としてのアイデンティティーという視点の完全な欠如」としているのがうーーん、と考えさせられた。
言葉は伝達の手段だけではなく、文化や思考までも含んでいる。
確かに英語で日本のあいまい文化は表現しがたい。米英言語に支配されることは、思考も支配されることに、たしかになりかねないようにも思う。
一時期、米英のロジカルな文法の導入にともなって、日本人のあいまいさが低文化の象徴のようにあげつらわれる時があったと思うけど、これは本来文化の差であって優劣はないものなのだと思う。
ともかく国語教育。確かに大事。
もちろん英語学習も重要だけど、それ以前の母国語がもっと大事だということを忘れないこと。(^^;
導入する陰で失われるものがある。すべてに共通すること。それがものすごく大事なものだったりすることもあるのだから、いろいろな視点を持つことを忘れずにいよう。
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