日本人とグローバリゼーション (講談社プラスアルファ新書)
河合 隼雄 石井 米雄
臨床心理学者・京都大学名誉教授・文化庁長官 河合隼雄さんと、京都大学名誉教授・外国語の達人 石井米雄さんのグローバリゼーションにかかる対談。(両者とも故人)
ピックアップ
・(河合)日本人は宗教に関する知識がなさすぎる
・(石井)ノンヴァーバル・コミュニケーションを言語化していくことで、明示的に共有できるようなシステムがどうやったらできるか
・(河合)区別するということを徹底的に洗練させていくことによって、欧米の文化はできている。背景にはキリスト教がある
・(河合)講演について:日本人は弁解ではじめて、アメリカ人はジョークではじめる
日本人・・・集まっただけですでに一体感がある。だからそこから抜け出ることに、まず弁解が必要
アメリカ人・・・集まっても、それだけはバラバラ。一緒にワッと笑うことで、一体感を作る
(以下石井)
・受験英語の中心:英文和訳、英語を意思伝達の手段と考えさせるような問題はほとんど皆無に近い。話す英語は「英会話」などという不思議な名で呼ばれる
・(ベトナムについて)先進文明を学ぶためではなく、きびしい世界の中で自己を主張し、その独立を守りぬくための武器として勉強する。日本は、外国語をひたすら先進文明受容の手段としてのみとらえている
・日本文化を世界の文化のひとつとして相対化し、相手国との対話が成立するかを検討する
...
この本を通して伝わってきた精神は、外国語学習や国際交流を、ただ相手国の文化を理解したり受容したりするだけでなく、こちらからも発信し、理解してもらう努力をせよということ。
お互いの価値感の違いや文化の違いを理解することを前提にしなくては、「対話」なんてものが正常に成立しない。
理解という面で言うと、確かに、自分自身宗教に関しての知識がないなぁ。。と思った。
欧米のキリスト教、中東のイスラム、タイの仏教など、宗教を学ぶことで政治や人の動きの原理のようなものを推測することができるのかもしれない。
そしてそれは日本についても同じ。日本人の宗教観っていうものをちゃんとわかってはいないし説明するのも自信がない。
著者の河合さん自身は、日本についての研究の末、日本人の宗教観を神話にまでさかのぼって「中空均衡型」っていう面白い論理を展開、それを異文化の人間に説明することを実践している。
ともかく、異文化を理由に意図が理解されず、不当な扱いを受けたと感じた際に、それをそのままにせずあきらめないで理解してもらう努力をする、この姿勢は大事なんだとおもった。その武器としての語学力。
新しい世界との向き合い方を学ばせてくれる、また外国人の中で猫背になりがちな日本人にそうじゃないと力をくれる、気持ちのいい1冊だった。
読んでよかった。
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